【科学的に徹底解説】「ししとう」と「ピーマン」の無辛味要因は全くの別物

【重要】「ピーマン」と「ししとう」の無辛味要因は全くの別物である

 「ピーマン」も「ししとう」も香辛料ではなく、野菜として販売されていて、どちらも辛味が無い品種というイメージがありますよね。しかし、「ピーマン」と「ししとう」が無辛味となるメカニズムは、両者で全く異なることが、これまでのトウガラシ辛味研究から明らかにされています。結論から先に具体的に述べると、

ピーマン」はカプサイシンを合成することが出来ないため辛味が無く、「ししとう」はカプサイシンを合成出来るものの、カプサイシン含量が極めて少ないため、辛味がありません。

 本記事ではこれらの違いについて、科学的に徹底解説したいと思います。

ピーマンは辛味成分合成に必要な遺伝子が完全に壊れ、カプサイシンが合成されないため、辛味が無い

 ピーマンの起源は詳細には明らかにされていませんが、祖先であるトウガラシに生じた突然変異が、辛味の喪失を引き起こし、その結果、ピーマンのような無辛味のトウガラシが誕生したと考えられます。

 この辛味の喪失は、果実内のカプサイシン合成能力の喪失によるもので、ピーマンのカプサイシン合成能力は完全に失われていることが明らかにされています。また、これは辛味成分合成に必要不可欠な遺伝子の機能が完全に失われているためであることも明らかにされています。

辛味成分合成に関する遺伝子の話について詳しく知りたい方は下記のページをご覧ください。

ししとうはカプサイシンを合成できるが、合成量が極めて少ないため、辛味が無い

 ししとうは、さきほど述べたピーマンのようにカプサイシン合成に必要不可欠な遺伝子が壊れているわけではなく、むしろ、これらの遺伝子は正常に働くことができるため、カプサイシンの合成が可能です。では、なぜ辛味が無いのでしょうか?

 これは、しししとう果実内のカプサイシン合成量が他の辛味品種と比較して極めて少ないからです。

 ししとうは辛味が無いため、果実内のカプサイシン含量が0であると思われがちです。しかし、ししとう果実の胎座・隔壁(カプサイシンを合成する果実内の組織)に蓄積するカプサイシン含量を調べた結果、私たちが辛味を感じるかどうか分からない程度の、微量のカプサイシンが存在していることが過去の研究で分かっています。

 このことから、ししとうは普通の辛味品種と同様にカプサイシンを合成していているけれど、私たちが辛味を感じてしまうほど多くのカプサイシンがつくられていないため、果実に辛味がないのです。ししとうは辛味の無い品種として流通されていますが、この事実をみると通常の辛味品種と同じ仲間とみなすことが出来るかもしれませんね。 

どうしてししとうのカプサイシン合成量は少ないの?

はてなマークを浮かべる女性の顔のイラスト

 残念ながら、ししとう果実内のカプサイシン合成量がなぜ、これほどまでに少ないのかは現在の研究でも明らかにされていません。しかし、考えられる原因としては辛味成分合成に関与する遺伝子の働きが弱いことがあげられます。

 生物は遺伝子をDNAの配列情報としてもっているだけでは意味が無く、その遺伝子が転写・翻訳を経てタンパク質になり、そのタンパク質が機能することで初めて意味を持ち、その遺伝子が機能した(働いた)と言えるでしょう。ししとうは辛味成分合成に必要な遺伝子の情報がすべて完璧にそろっているのにもかかわらず、それらを働かせていない(あるいは働かないようにされている)ためにカプサイシンの合成量が少なくなり、辛味が無いのかもしれません。これはまるで、道具と作業場を完璧に準備しておきながら、仕事をしない大工のようなもので、生物学的には非常に不思議ですよね。ヒトでは宝の持ち腐れと言われてしまいますが……..

【参照】・The Pun1 gene for pungency in pepper encodes a putative acyltransferase, Stewart et al. 2005

・ 蛍光灯連続光下における暗期挿入および暗期の温度がシシトウ果実の辛味発現に及ぼす影響,Murakami et al. 2006.

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