トウガラシの辛味の強さを測定する方法まとめ

トウガラシの辛味の強さはどのようにして調べるのか?

唐辛子の辛味の強さはカプサイシンという物質の多寡によって決まります。つまり、カプサイシンが多いほど、その果実の辛味は強いと言えます。では、このカプサイシン、一体どのようにして定量されているのでしょうか?

カプサイシンを定量する方法は、以下の3つが知られています。

  1. 希釈法
  2. 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量
  3. 薄層クロマトグラフィー(TLC)による定量

本記事では、この3つのカプサイシン定量法について、そのメリットとデメリットを含め、ご紹介したいと思います。

①希釈法

 希釈法は今回ご紹介する3つの方法の中でもっとも簡便な分析方法です。希釈法では、まず、エタノール中に溶出したカプサイシンを水で希釈し、その溶出液の官能試験(辛味の有無を味見で調べる試験)を行います。そして、辛味が感じられなくなるまで水を加えて薄め、その希釈程度からカプサイシン含量を算出します。

希釈法は特殊な分析装置を必要とせず、極めて簡便な点で優れています。皆さんが良く知っている「スコヴィル値」は、砂糖水の希釈倍数から算出される辛味強度の値で、上記の希釈法と同様の原理で調べられます。

しかし、この分析手法、簡便がゆえに測定の精度はそれほどよくありません。これは言うまでもなく、分析に「人間の舌」を使っているからです。辛味の感度は人によって異なり、希釈法では実験者によって結果に大きな誤差が生じることがあります。このため、正確にカプサイシン含量を定量する必要があるとき、希釈方は適切な分析手法とは言えないでしょう。ただ、辛味の有無ぐらいであれば「人間の舌」だけでも十分であるため、このような場合、特に大量のサンプルを調べなければならない場合は、こういった「官能試験」が絶大な力を発揮します。

②高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定量

Wikipediaより引用。https://ja.wikipedia.org/wiki/高速液体クロマトグラフィー
記号Gが「カラム」と呼ばれる筒。カラム内の移動速度が物質ごとに異なる性質を利用して、目的物質とそれ以外の物質を分離することができる。

 高速液体クロマトグラフィー「High Performance Liquid Chromatography:略称 HPLC」は気化しにくい(不揮発性)物質を、高精度に定量する分析方法で、今回ご紹介する方法のなかでは、カプサイシンを最も正確に定量することができます。

HPLCではまず、「カラム」と呼ばれるシリカゲルなどが充填された筒に、カプサイシンの抽出液をメタノールと水の混合液と一緒に、高速かつ高圧力で流しこみます。このカラムは「ふるい」のような性質をもっていて、物質がカラムを通過する際、物質ごとに「通りにくさ」、すなわち移動速度が異なります。HPLCでは、この性質を利用してカプサイシンと、それ以外の物質を分離することが出来るのです。そして、最終的には、分離されたカプサイシンに280nmの紫外線をあて、その吸収量を調べます。カプサイシンの質量は紫外線の吸収量に比例し、カプサイシンの質量が多いほど、吸収される紫外線量も増加するため、紫外線吸収量から試料内のカプサイシンの質量を逆算することが出来るのです。

HPLCは極めて高い精度でカプサイシンを検出できる点で優れており、近年のトウガラシ辛味研究では、ほとんどの場合、カプサイシン含量の定量にはHPLCが用いられます。しかし、HPLCに用いる分析装置は、?十万~?百万(円)とかなり高価。また、カプサイシンを抽出してからHPLC分析を行うまで、非常に長い時間(おカネも)がかかるため、大量のサンプルを処理する場合には限界があると言えるでしょう。

③薄層クロマトグラフィー(TLC)による定量

 薄層クロマトグラフィー「Thin Layer Chromatography: TLC」は「希釈法」の次に簡便な方法で、HPLC分析には測定精度が劣りますが、比較的高い精度でカプサイシンを定量することが出来ます。

HPLCが「カラム」を用いてカプサイシンとそれ以外の物質を分離していたのに対し、TLCではガラス板などにシリカゲルなどを吸着させた「薄層」を用いて分離を行います。具体的には、この「薄層」に試料を置き(スポットし)、上図のように密閉容器内の液体に浸すと、液体が薄層を登り始めます。これは「毛細管現象」と呼ばれるもので、ティッシュを水に浸すと、みるみるうちに上部にも水が染み渡る、あの現象です。この「毛細管現象」によって液体が薄層を登り始めると、スポットした試料も一緒に移動を始めます。このとき、薄層に吸着されたシリカゲルの影響で、HPLCのときと同様、物質ごとに移動する速度が異なります。この移動速度の違いを利用して、目的物質と、それ以外の物質を分離することが出来るのです。その後はHPLCと同じで、物質の紫外線吸収量から定量を行うことが出来ます。

 この方法はHPLCのように、高価な分析装置を必要としないため、安価、かつ比較的高精度でカプサイシンを検出できる点で優れています。しかし、TLCではカプサイシンの仲間である、ジヒドロカプサイシンとカプサイシンを定量の際に区別できない等の難点があるようです。

【参照】・健康を考えた食品学実験, 渡辺ら, 2012, アイ・ケイコーポレーション

・トウガラシの辛味に関する生理学的ならびに遺伝学的研究V 辛味の遺伝,太田泰雄,木原生物学研究所,1996 

・Rapid determination of capsaicinoids by colorimetric method, Ryu et al. 2017

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