唐辛子の辛味の有無は1遺伝子で支配されている

Pun1という遺伝子がトウガラシの辛味の有無を決めている

 トウガラシの辛味は果実内で合成される辛味成分(カプサイシ)によるもので、果実内の辛味成分合成能力の有無がトウガラシの辛味の有無を決定します。鷹の爪やハバネロのような辛味品種は辛味成分合成能力をもちますが、トウガラシの仲間であるピーマンのような非辛味品種には辛味成分合成能力がなく、果実内で辛味成分が合成されないため、辛くなることがありません。この、辛味成分合成能力の有無を支配しているのがPun1という遺伝子であり、2005年にstewartらによって発見されました。

Pun1遺伝子は辛味成分合成に必要不可欠な遺伝子

 辛味成分であるカプサイシンはトウガラシ果実の胎座(たいざ)・隔壁(かくへき)という部位で合成されますが、その組織内に存在するカプサイシン合成経路においてPun1遺伝子は重要な役割をもちます。具体的には、合成経路上の最後の場所でバニリルアミンと分枝鎖脂肪酸という2つの物質を合体させてカプサイシを合成する役割をもちます(下図参照)。この代謝(生体内の化学反応)はカプサイシンを合成するうえで必要不可欠であり、Pun1遺伝子は辛味成分合成において最も重要な遺伝子であるといえます。

 これまでの研究でPun1遺伝子が壊れる、すなわち遺伝子に変異が生じるとトウガラシ果実内の辛味がなくなってしまうことが明らかにされています。これは先ほど述べた、カプサイシン合成経路の最後の代謝がPun1遺伝子の機能喪失により正常に行われないためであると考えられます。

ピーマンに辛味が無いのはPun1遺伝子の機能が失われているため

 はじめにトウガラシの仲間であるピーマンに辛味が無いのは辛味成分合成能力が欠如しているためであると述べましたが、これはPun1遺伝子の機能が失われているためであることが知られています。これについて少し専門的な話をすると、ピーマンがもつPun1遺伝子は、遺伝子として正常に機能するために必要なプロモーターとエキソンという領域の大部分が存在せず、遺伝子内に非常に大きな変異があることが明らかにされています。これらの変異はPun1遺伝子の機能の喪失を引き起こし、その結果としてカプサイシンが合成されず辛味が全くないのです。

※【注意】いい加減なネット情報によると、「ピーマンが栽培中の環境ストレスで辛くなる」と書かれていることがありますが、ピーマンの場合、辛味成分合成に必要な遺伝子が完全に壊れているため、栽培中の環境ストレス等の影響によりピーマン果実内で辛味が発生することはありません。

 【参照】The Pun1 gene for pungency in pepper encodes a putative acyltransferase,
Stewart et al. 2005,

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