「万願寺とうがらし」の辛味形質と改良品種「京都万願寺2号について」

京野菜「万願寺とうがらし」について

 京野菜の一つである「万願寺とうがらし」。ほのかな辛味と、強い甘味を持つその果実は「揚げびたし」や「串焼き」にして食べれば絶品です。「万願寺とうがらし」は20世紀のはじめ、京都府舞鶴市で栽培が始まったと言われており、以前は京野菜の「伏見甘長」とピーマン品種「カリフォルニアワンダー」の雑種(子供)であると言われてきました。しかし、近年の分子遺伝学的手法を用いた親子鑑定の結果、これらは否定され、「万願寺とうがらし」の来歴は依然として不明です。

「万願寺とうがらし」は栽培時の辛味発生が問題

 「万願寺トウガラシ」は「ししとう」と同様、高温をはじめとする様々な栽培環境の影響を受け、辛味果実が発生することが知られています。「ピーマン」といった無辛味トウガラシはカプサイシンを合成することが出来ないため、栽培時に辛味が発生することはありません。しかし、「万願寺とうがらし」の場合は、カプサイシン合成能力が完全に失われているわけではないため、栽培時の環境次第で、辛味が発生することがあるのです。このような性質をもつ「万願寺とうがらし」の栽培では、辛味が出ないように栽培条件を工夫する必要がありますが、これには限界があります。そんな背景から、どのような栽培条件下でも辛味果実が全く発生しない「万願寺とうがらし」の品種改良が始められたのです。

「京都万願寺2号」は辛味の発生しない「万願寺とうがらし」

  新品種「京都万願寺2号」はどのような栽培条件下でも、辛味が絶対に発生しない「万願寺とうがらし」で、京都府農林水産技術センターによって開発されました。

「京都万願寺2号」の育成プロセス

細かい部分は省略していますが、「京都万願寺2号」は以下の育種過程を経て育成されました。

  1. 「ピーマン」と「万願寺とうがらし」を交配(ピーマンが保持する、機能欠損型カプサイシン合成遺伝子pun1を導入)
  2. 1.で得られた子供に、再び「万願寺とうがらし」を交配.
  3. 2.で得られた子供のなかから、機能欠損型pun1成遺伝子を保持する個体を選抜
  4. 2.と 3.の工程をを何度か繰り返して、形質を「万願寺とうがらし」に戻していく(戻し交配)

これだけ見ても良くわからないかもしれませんが、この品種改良では、ピーマンが持っている機能の失われたカプサイシン合成遺伝子pun1を、「万願寺とうがらし」に導入することで、果実内でカプサイシンが合成されないよう改良しているのです。

【参照】・辛味果実の発生しない甘トウガラシ新品種‘京都万願寺2号’の育成,2012, 南山ら

・SSRマーカーを利用した‘万願寺とうがらし’(Capsiccum annuum L.)の親子関係分析, 2017,三村ら

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