胎座だけじゃなく果肉まで辛い唐辛子

トリニダードモルガスコーピオンは胎座だけではなく果肉でもカプサイシンを合成している

トリニダードモルガスコーピオン
https://www.sandiaseed.com/products/trinidad-moruga-scorpion-1

 トリニダードモルガスコーピオンはカリブ海の小アンティル諸島南部のトリニダード・トバコを起源とする超激辛トウガラシで、2013年には世界1辛いトウガラシとして認定されています。トウガラシの辛味の原因は辛味成分であるカプサイシンによるものですが、トリニダードモルガスコーピオンがなぜ、これほどまでに多くのカプサイシンを合成するのかは、現在の研究でもはっきりとしたことが分かっていません。しかし、近年の研究で、トリニダードモルガスコーピオンが、通常カプサイシン合成が行われない果皮(果肉)でも、カプサイシンを合成していることが明らかにされまた。

 本記事ではトリニダードモルガスコーピオンが超激辛である理由の一つを、近年の辛味研究の結果から解説したいと思います。

一般的なトウガラシはカプサイシンを胎座(たいざ)・隔壁(かくへき)という組織だけで合成する

ししとうの胎座と隔壁

 多くのトウガラシはカプサイシンを果実全体で合成しているわけではなく、果実内の胎座(たいざ)・隔壁(かくへき)という組織のみで合成を行っていることが知られています。詳しく知りたいという方は下記のページを参照してください。

カプサイシは唐辛子のどの部分でつくられるの?

 私たちが日常的に食べる「鷹の爪」のような辛味品種であっても、カプサイシンが合成されるのは胎座・隔壁であって、果皮(果肉)や種子ではカプサイシンを合成していません。このため、胎座・隔壁のカプサイシンが漏出して果皮や種子が辛くなることはあるものの、基本的に辛味が強いのは胎座と隔壁だけです。

トリニダードモルガスコーピオンは胎座・隔壁に加えて、果皮(果肉)でもカプサイシンを合成している

トリニダードモルガスコーピオンの断面図
https://www.sandiaseed.com/products/trinidad-moruga-scorpion-1

 さきほど説明したようにほとんどのトウガラシは胎座・隔壁だけでカプサイシンを合成するのに対し、トリニダードモルガスコーピオンは胎座・隔壁に加え、果皮(果肉)でもカプサイシンを合成していることが近年の研究で分かりました。実際にどのような実験結果が得られたかというと、以下のことが明らかにされました。

①トリニダードモルガスコーピオンでは果皮のカプサイシン総含量が胎座・隔壁よりも多く検出された

 トリニダードモルガスコーピオン果実を、果肉、胎座・隔壁の部位ごとに分け、それぞれのカプサイシン含量を調べた結果、果皮内のカプサイシン含量は胎座・隔壁と同等かそれ以上であることが分かりました。

②トリニダードモルガスコーピオンの果皮では通常は働いていない辛味成分合成に必要な遺伝子が働いていた。

 遺伝子の働きの有無や働きの度合いを調べる手法である遺伝子発現解析を実施した結果、トリニダードモルガスコーピオンの果皮では、辛味成分合成に必要な遺伝子がしっかりと働いていることが分かりました。一般的な辛味品種の果皮では働くはずの無い遺伝子がトリニダードモルガスコーピオンでは働いていたため、この結果はトリニダードモルガスコーピオンの果皮でカプサイシンが合成されていることの証拠となりました。

 以上のようにトリニダードモルガスコーピオンは果皮でもカプサイシンを合成し、一般的な辛味品種よりもカプサイシンを合成する場所が多いため、非常に強い辛味を持つのではないかと考えられます。

【参照】・Difference in capsaicinoid biosynthesis gene expresssion in the pericarp reveals elevation of capsaicinoid contents in chili peppers (Capsicum chinense) (Tanaka et al. 2017)

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