AI(人工知能)を駆使した品種改良「ゲノミックセレクション」について

品種改良におけるAI(人工知能)の参入について

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 近年、様々な分野で利用されているAI(人工知能)ですが、作物の品種改良にもその技術が導入されつつあります。AIと聞いても、その言葉の意味は実に幅広く、いまひとつイメージがわかないかもしれませんが、近年の品種改良ではAIの一種である機械学習という手法が取り入れられています。機械学習とは、コンピューターが学習した膨大なデータをもとに、物事の予測や分類を行う技術のことで、ビックデータを取り扱う様々な分野で利用されています(私信)。

品種改良では、多くの場合、「交配」という過程を経ます。しかし、理想の子供を得るために、「どのような親間で交配を行えばよいのか」を知るすべはほとんどなく、私たち人間の予想と、長年の経験に頼っている部分が、多かれ少なかれあります(※メンデルの法則に従うような、シンプルな遺伝形質(質的形質)の場合はこの限りではありません)。これは、交配親がもつ遺伝子の情報量が極めて多く、これらのデータをもとに、交配後代の形質を予想することが私たち人間には非常に難しいためです。

しかし、近年のAI技術の発達によって、作物の膨大なDNA配列情報から、その個体の形質を予想することが可能になり、「人間による品種改良の限界」を打破できる可能性が生まれました。

AIを駆使した品種改良「ゲノミックセレクション」について

トウモロコシ

 ゲノミックセレクションは、その作物の遺伝情報をもとに有望個体の選抜(有望個体を得るための両親の選定)を行うもので、もともとは家畜育種で用いられていました。この手法は、収量や草丈といった実際の「表現型」をもとに個体を選抜する従来の方法と比較して、非常に効率的であると言われています。

「ゲノミックセレクション」は以下のプロセスで行われ、ここではある作物の「収量」に焦点をおいた品種改良を例にして説明したいとおもいます。

ゲノミックセレクションの流れ

  1. 多数の交配親を用意し、様々な組み合わせで交配し、子供を得る
  2. 交配親やその子供の膨大なDNAの配列データを収集する
  3. 交配親やその子供の収量諸形質を調査する
  4. 機械学習によって、コンピューターに上記のDNA配列情報と収量データを学習させる
  5. 学習結果から、DNA配列情報をもとに収量を予測する関数(モデル)を構築する
  6. 完成したモデルを用いて、交配を行う両親のDNA配列情報から交配後代の収量を予測する
  7. 予測結果から、収量の高い有望交配後代の選抜する

「ゲノミックセレクション」では、交配親のDNA配列情報さえ分かっていれば、予測モデルをもとに有望個体を選抜することが可能で、わざわざ子供を植えて、その形質の良し悪しをみてから選抜する必要がないのです(予測モデルが正しければの話ですが。。。)。果樹のように栽培期間が長い作物では、「ゲノミックセレクション」の導入によって、品種改良の期間が短縮される可能性があり、有用な育種技術として期待されています。ちなみに、これまで日本では「なし」や「カンキツ」などで、実践例があります。

【参照】・ゲノミックセレクションおよびハイスループットフェノタイピングを用いた作物育種の効率化・高速化, Guo et al., 2018

・Genomic prediction of trait segregation in a progeny population: a case study of japanese pear (Pyrus pyrifolia)、Iwata et al. 2013

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