唐辛子の「房成り」は劣性形質・メンデルの法則で遺伝する

「房成り着果」は複数の果実が束状につく形質

鷹の爪の房成り着果形質

 「鷹の爪」や「八房(やつぶさ)」の果実の付き方に着目すると、上写真のように、複数の果実が束状になってついています。これは「房成り着果」と呼ばれ、見た目が華やかであることから、観賞用のトウガラシ品種などに多く見られます。また、「房成り着果形質」をもつ品種では、束になっている複数のトウガラシを、一度にまとめて収穫できるため、収穫作業性に優れた形質であるとも言えるでしょう。詳しくは、下記の記事もご覧ください。

「房成り着果」の対立形質「節成り着果」について

 トウガラシには「房成り着果形質」の他に、上写真(右)のような「節成り着果形質」があり、トウガラシ全体でみると、「房成り着果形質」よりも「節成り着果形質」のほうが多数派です。

「節成り着果形質」の「房成り着果形質」の大きな違いは、果実がつく節と節の間の長さにあると言われています。トウガラシは分枝する各節の脇から、花が咲いて果実が形成されますが、「節成り」の場合は、果実が付く節と節の間の長さ(節間)が十分長いため、果実が離散してついているように見えます。一方で「房成り」の場合は節間が極度に短く、あたかも、枝の先端のある1点から果実が房状に付いているように見えます。

 これまでの研究から、トウガラシの「節成り着果形質」と「房成り着果形質」は対立形質であることが明らかにされています。「対立形質」とは、エンドウ種子の「まる」と「しわ」の関係のように、対になっている形質のことで、両者を交配したときに、双方の形質が現れることはなく、片方の形質だけが現れます。

「房成り着果形質」は劣性でメンデルの法則に従って遺伝する

 これまでの遺伝学研究からトウガラシの着果形質に関して、「房成り着果」は「節成り着果」に対して劣性であることが明らかにされています。この遺伝様式は、「節成り着果形質」をもつ親と「房成り着果形質」をもつ親を交配し、その子世代と孫世代の着果形質を上図のように調べることで明らかにされました。

 まず、「節成り」と「房成り」をそれぞれ示す親を交配すると、その子世代はすべて「節成り」を示すことが分かりました。この結果から、子世代で現れた「節成り」は優性、現れなかった「房成り」が劣性であることが示されました。

 さらに、子世代を自家受精させ、得られた孫世代の着果形質を調べると、「節成り」を示す個体の数と「房成り」を示す個体の数の比が、3:1であることが分かりました。これは、メンデルの法則で習った、エンドウの「まるい種子」と「しわの種子」が3:1に分離するという現象と全く同じで、孫世代で優性形質(節成り)と劣性形質(房成り)が3:1にきれいに分離したことを示します。

以上のことから、「房成り着果形質」は「節成り着果形質」に対して劣性であるとともに、メンデルの法則に従ってこれらの形質が遺伝することが明らかにされました。ちなみに、このように孫世代で3:1の分離がみられる遺伝は、いずれも、その形質が単一の遺伝子によって支配されている場合で、「草丈」や「収量」のように多くの遺伝子が関与する複雑な遺伝とは異なります。このため、トウガラシの着果形質は「房成り」と「節成り」で見た目が大きく異なるもののの、その遺伝様式は意外にもシンプルであると言えます。

【参照】・Mapping and identifying candidate genes involved in the novel fasciculate inflorescence in pepper (Capsicum annuum L.) Junheng et al. 2019

・Co-ordinated regulation of flowering time, plant architecture and growth by FASCICULATE: the pepper orthologue of SELF PRUNING Elitzur et al. 2009

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