唐辛子の辛味の強さを決めているのは 「品種」・「果実成熟度」・「栽培環境」の3つ

トウガラシの辛味の強さは品種・果実成熟度・栽培環境によって決まる

 トウガラシの辛味の強さは果実に蓄積する辛味成分の量によって決まり、辛味成分であるカプサイシンが多いほど私たちが感じる辛味も強くなります。では、トウガラシ果実内のカプサイシン含量の変化はなぜ生じるのでしょうか?結論から言うと、これらは品種、果実の成熟度、そして栽培環境の違いによって変化することがこれまでの研究で明らかにされています。本記事ではトウガラシの辛味の強さを決める3つの要因について説明したいと思います。

トウガラシの辛味を決める要因① 品種

 世界には様々なトウガラシがありますが、辛味の強さに着目すると「ハバネロ」や「ブート・ジョロキア」のように、少し食べただけでも悶絶してしまうほど強い辛味をもつものもあれば、一味唐辛子として利用される「鷹の爪」や「八房」のように、普通の辛さ(世界的には)のトウガラシもあります。一方、「ししとう」や「万願寺トウガラシ」のように野菜として利用される、辛味のほとんどないトウガラシもあり、辛味の強さは実に様々であると言えます。

 このような辛味の違いは品種の違いによるもので、各品種が持つゲノム情報(DNAの情報)が異なるために辛味の強さも異なると考えられています。しかし、実際のところ「ハバネロ」と「ししとう」で、なぜこれほどまでに辛味の強さが異なるのかは、はっきりとは分かっていません。ただ、辛味の異なる品種間では辛味成分合成に関わる複数の遺伝子の配列が微妙に異なるようで、ひょっとすると、これらの変異の組み合わせなどで辛味の強さが決まっているのかもしれません。

トウガラシの辛味を決める要因② 果実の成熟程度

 先ほど、品種間で辛味の強さが大きく変化すると説明しましたが、全く同じ品種のトウガラシであっても果実の成熟程度の違いによって辛味の強さは大きく変化します。

 まず、受精して間もない時期の果実には辛味が全くありません。これは果実内でカプサイシンの合成が始まっていないためです。よって、開花後間もない果実であれば、「鷹の爪」であろうと「ハバネロ」であろうと全く辛くはないのです。

 しかし、開花後10日程度経過すると(品種によって異なる場合があります)カプサイシン合成が始まり、徐々に蓄積していきます。つまり、トウガラシはこの時期あたりから果実に辛味がある可能性が高いです。

 その後、カプサイシンの蓄積はトウガラシが完全に赤くなるころまでは確実に続きます。しかし、果実が完全に赤色に変化した後は基本的にカプサイシン含量は減少する傾向にあります。これはカプサイシンがペルオキシダーゼという酵素の働きで分解されているからであると考えられています。

 以上のように、トウガラシの辛味の強さは果実の成熟によって変化し、なかでも果実色が緑色から赤色に変化するころの辛味が強いと言えるでしょう。

トウガラシの辛味を決める要因③ 栽培環境

 果実の成熟程度と同様に、トウガラシの栽培環境もまたトウガラシの辛味変動を引き起こす要因の一つです。これまで栽培研究から以下の栽培環境がトウガラシの辛味変動を引き起こすと言われています。

①水分・②気温・④光の強さ・③肥料の量

 この4条件はトウガラシが生育するうえですべて重要な栽培条件であり、これらが不足、あるいは過剰になるとトウガラシの辛味にも変化が生じます。しかし、単に水分が少なければ辛くなるとか、窒素肥料が少なければ辛くなるといった一貫性があるわけではなく、品種によって辛味の増減はばらばらです。例えば、気温に関して言うと、高温で辛味が上昇する品種もあれば、高温だとかえって辛味が弱くなってしまう品種もあります。このように一概に辛味がどのように変化するのかを説明することは難しいのですが、辛味の変動を抑えるには、上記の4条件について過度な変化を与えないことが重要でしょう。

【参照】

・Capsaicinoids: Pungency beyond Capsicum (Naves et al. 2019)

・Biochemistry and molecular biology of capsaicinoid biosythesis: recent advances and perspectives (Arace-Rodriguez et al. 2019)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です