【科学的に徹底解説】唐辛子果実内のカプシエイト合成メカニズム

カプシエイトは唐辛子由来の機能性成分

 近年、カプシエイトの入った健康サプリメントをよく見かけます。カプシエイトはトウガラシの辛味成分の一種で、皆さんの良く知っているカプサイシンと同じ仲間です。カプシエイトにはカプサイシンと同様に体熱産生作用(体温をあげるはたらき)や脂肪代謝促進作用(脂肪を燃焼するはたらき)といった様々な機能があり、さらに、辛味の強さがカプサイシンの1/1000と非常に弱く、摂取しやすいことから、機能性成分として大変注目されています。

カプシエイトの合成メカニズムはカプサイシンとほぼ同じ

 カプシエイトの合成はトウガラシ果実内の胎座・隔壁という組織で行われますが、その合成メカニズムはカプサイシンとほとんど同じです。

具体的に説明すると、上図のように、カプサイシンとカプシエイトは、ともに「バニリン」という物質を材料にしてつくられます。まず、カプサイシンは「バニリン」を材料にして「バニリルアミン」を合成し、最後に「分枝鎖脂肪酸」と縮合(合体)することで合成されます。一方、カプシエイトの場合は「バニリン」から「バニリルアミン」ではなく「バニリルアルコール」を合成します。そして、この「バニリルアルコール」が、カプサイシンと同様に「分枝鎖脂肪酸」と縮合することで「カプシエイト」が合成されます。

ごちゃごちゃと説明しましたが、まとめると、カプサイシンとカプシエイトの合成は「バニリン」から「バニリルアルアミン」を合成するか、「バニリルアルコール」を合成するか、という点で異なります。一方、これら以外に合成に関する違いはありません。

 ただ、カプサイシンとカプシエイトの合成量を比較したとき、通常の辛味品種の場合は、圧倒的にカプサイシンが多く、カプシエイトは非常に少ないことが知られています。これは、辛味品種が「バニリン」から「バニリルアミン」を優先的に合成し、「バニリルアルコール」の合成量が少ないためであると考えられます。

pAMT遺伝子をぶっ壊せば、辛味が喪失し、カプシエイトの合成量が増加する

 さきほど、カプサイシン合成において、「バニリン」から「バニリルアミン」を合成するプロセスが必要がであると述べましたが、この反応を担うのがpAMTという遺伝子です(上図)。pAMT遺伝子は推定アミノトランスフェラーゼ遺伝子のことで、「バニリン」にアミノ基を転移して、「バニリルアミン」を合成するを酵素をコードしています。

通常の辛味品種のように、pAMT遺伝子が正常に働いている場合は、下図のように「バニリン」から「バニリルアミン」が合成され、カプサイシンがカプシエイトよりも多量に合成されます(下図)。

 しかし、辛味が非常に弱い「CH19-甘」という品種ではpAMT遺伝子の機能が失われており、下図のように「バニリン」から「バニリルアミン」がほとんど合成されず、カプサイシンの合成量が著しく少ないことが明らかにされています。その代わりかどうかは分かりませんが、行き場のなくなった「バニリン」は「バニリルアルコール」に代謝され、結果としてカプシエイトが相対的に多く合成されます。

 この「CH19-甘」は、タイ原産の「CH19」という辛味品種の中から、辛味のない突然変異体として選抜され、育成された品種です。これまでのトウガラシ辛味研究から、「CH19甘」の辛味喪失は、もともとは「CH19」で正常に働いていた、pAMT遺伝子の機能が失われ、カプサイシンがほとんど合成されなくなったためであることが明らかにされています。また、「CH19甘」の果実には、カプシエイトが多量に含まれていたことから、pAMT遺伝子の機能喪失がカプサイシンの合成を抑制する一方で、カプシエイトの合成量の増加させることが明らかになりました。カプシエイトの辛味は非常に弱いため、たとえ、果実内のカプシエイト含量が高くとも、「CH19-甘」には辛味がほどんどないのです。

これまでの研究で、pAMT遺伝子の機能が失われているトウガラシは「CH19-甘」以外にも数多く報告されていますが、いずれの場合も、カプサイシン含量が少なく、かつ、カプシエイト含量が高いことが明らかにされています。ちなみに、日本では「ひもとうがらし」という奈良県の在来品種で報告があります。詳しく知りたい方は下記のページをご覧ください。

【参照】・Functional loss of pAMT results in biosynthesis of capsinoids, capsaicinoid analogs, in Capsicum annuum cv. CH-19 Sweet, Lang et al. 2009

・・Biochemistry and molecular biology of capsaicinoid biosythesis: recent advances and perspectives, Arace-Rodriguez et al. 2019

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です