【辛味成分の合成メカニズム】カプサイシンの生合成経路

カプサイシンの生合成は胎座・隔壁で行われる

 唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは、果実内の胎座(たいざ)・隔壁(かくへき)という組織の表皮細胞で合成されることが明らかにされています(一部の激辛品種では果肉でも合成されています)。また、合成されたカプサイシンは同組織細胞内の液胞に蓄積されています。

カプサイシンの生合成経路

 カプサイシンは上図のような生合成経路でつくられることが明らかにされており、「フェニルプロパノイド合成経路」と「分枝鎖脂肪酸合成経路」という2つの経路が内在します。

フェニルプロパノイド合成経路

 フェニルプロパノイド合成経路は芳香族アミノ酸の「フェニルアラニン」を出発物質として、「桂皮酸」や「バニリン」といったベンゼン環をもつ様々な物質を合成する経路です。カプサイシンの生合成では「フェニルアラニン」から最終的に「バニリルアミン」が合成されます。余談ですが、フェニルプロパノイド合成経路は「カプサイシン」だけではなく、「フラボノイド」や「リグニン」といった他の二次代謝産物の中間生合成経路でもあります。

分枝鎖脂肪酸合成経路

 分枝鎖脂肪酸合成経路は「バリン」あるいは「ロイシン」を出発物質として、「分枝鎖脂肪酸」を合成する経路です。トウガラシの辛味成分には「カプサイシン」のほかに、「ジヒドロカプサイシン」や「ノルジヒドロカプサイシン」といった様々な類縁化学物質があります。これらはまとめて「カプサイシノイド」と呼ばれていますが、その化学構造は分枝鎖脂肪酸の「炭素数(鎖の長さ)」や「2重結合の有無」にあります。上図は、最も主要な辛味成分である「カプサイシン」の例であり、「バリン」から「8-メチル-6-ノネノイル酸」という分枝鎖脂肪酸が合成されます。

 この「フェニルプロパノイド合成経路」と「分枝鎖脂肪酸合成経路」を経てそれぞれ合成された「バニリルアミン」と「8-メチル-6-ノネノイル-CoA」が最終的に縮合(合体)することで、カプサイシンが合成されます。

カプサイシンの化学構造を「鍵(カギ)」に例えると、「鍵の取っ手」のような「バニリルアミン」と、「鍵穴に入る歯」のような「8-メチル-6-ノネノイル-CoA」が別々の生合成経路でつくられ、それらが最後に合体して一つの鍵、すなわち、カプサイシンが出来上がります。

【参照】・・Biochemistry and molecular biology of capsaicinoid biosythesis: recent advances and perspectives (Arace-Rodriguez et al. 2019)

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