「鳥の糞」と呼ばれるカンボジアの唐辛子

カンボジアには「鳥の糞」という名前の唐辛子がある

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 日本に「鷹の爪」という名前の唐辛子があるように、海外でも唐辛子のことを唐辛子以外の名前で呼ぶことがあるようです。今日はカンボジア全土で栽培されている「鳥の糞」という名前の唐辛子をご紹介したいと思います。

カンボジアの唐辛子「マテ・アチサス」はクメール語で「鳥の糞」を意味する

カンボジアの唐辛子「マテ・アチサス」

 筆者は自身の研究でカンボジアの唐辛子を調査したことがあるのですが、カンボジアの農村部に行くと「マテ・アチサス」というトウガラシが必ずと言っていいほど各家庭の裏庭で栽培されています。「マテ・アチサス」はクメール語ですが、「マテ」は「唐辛子」を意味し、「アチサス」は「鳥の糞」を意味します。つまり「マテ・アチサス」は「鳥の糞トウガラシ」ということになります。このトウガラシ、小さくて可愛らしい果実をつけますが、食べてみると意外と辛くて香りもよく、カンボジアの家庭料理では欠かせない食材のひとつです。

「鳥の糞」の由来とは?

 それでは、「鳥の糞」という非常にユニークな名前が、なぜこのトウガラシにつけられているのでしょうか?「糞」というキーワードを食材の名前に採用するのは、なかなか面白いですよね。ここでは、これまでの調査から分かっている「鳥の糞」に関する2つの説をご紹介したいと思います。

①小さい果実の形を「鳥の糞」に例えた説

 「マテ・アチサス」の果実が「鳥の糞」のように小さいことから、この名前がついたという説があります。「マテ・アチサス」は、果実が上写真のように丸く、果実の長さが2~3 cmと非常に小さいのが特徴で、この小さい果実の形を「鳥の糞」に比喩したのかもしれません。

②「マテ・アチサス」の種子が「鳥の糞」を介してを広がることを表している説

 果実の形を「鳥の糞」に例えたという説のほかに、「マテ・アチサス」の種子が「鳥の糞」を介して伝播することを表しているという説があります。

 カンボジアの人々に行われた聞き取り調査の結果、「マテ・アチサスの種子は植えてもいないのに勝手にはえてくる」ということがよくあるそうで、鳥が「マテ・アチサス」の果実を食べ、糞を排泄する際に、糞に含まれている消化されなかった種子が落下し、芽がでて新たな個体が誕生するという「マテ・アチサス」独自の生活環があるのかもしれません。この鳥を介した「マテ・アチサス」の種子伝播を現地の人々は経験的に知っていて、その唐辛子に「鳥の糞」という名前をつけてしまったのかもしれません。

 鳥類は私たち哺乳類とは異なり、カプサイシンによる辛味を感じるためのセンサーが壊れ、辛味を感じないことが知られています。このため、鳥が唐辛子の果実を食べて種子伝播を媒介するということは、それほど珍しいことではないと考えられます。また、「マテ・アチサス」の果実サイズは先ほど述べたように非常に小さいため、鳥に食べられやすいのかもしれませんね。

【参照】・Collaborative survey of Solanaceous Genetic Resources in Eastern Cambodia 2015 Tanaka et al. 2005

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