鷹の爪のカプサイシン合成能力、ハバネロ超える説

鷹の爪のカプサイシン合成能力はハバネロより高い?

 「ハバネロ」は言わずと知れた激辛品種で、果実内のカプサイシン含量は、一味唐辛子に用いられる「鷹の爪」のなんと10倍以上!しかし、個々のカプサイシン合成能力に着目してみると、実は「鷹の爪」のほうが「ハバネロ」よりもカプサイシンを合成する能力が高いという可能性が指摘されています。本記事では「鷹の爪のカプサイシン合成能力、ハバネロ超える説」と題して、その詳細について過去の研究結果をもとに解説していきたいと思います。

トウガラシのカプサイシン合成能力って何?

ししとうの胎座・隔壁

 そもそも、「カプサイシンの合成能力」って何?と思われた方がいらっしゃると思いますので、まずはその説明から。カプサイシンは果実内の胎座・隔壁(上図)という組織でつくられますが、その単位組織あたりのカプサイシン含量を、本記事では「カプサイシン合成能力」と表現しています(カプサイシン合成能力に関する明確な定義はありません)。つまり、「カプサイシン合成能力」とは胎座・隔壁におけるカプサイシンの蓄積濃度のことであり、この値が高いほど、単位面積あたりのカプサイシンの合成量が多いと言えるため、カプサイシンの合成能力が高いとみなすことが出来ます。

鷹の爪のカプサイシン合成能力はハバネロよりも高い

 杉山ら(2006)の研究では、「鷹の爪」と「ハバネロ」それぞれにおける、果実内の総カプサイシン含量と、カプサイシンを合成する組織の面積が、様々な形態学的実験手法を駆使して算出されました。その結果、総カプサイシン含量を、カプサイシンを合成する組織面積で割った値、すなわち単位組織当たりのカプサイシン含量が、「ハバネロ」ではなく「鷹の爪」で高い値を示すことが明らかになりました。これは「鷹の爪」のカプサイシン合成能力が「ハバネロ」よりも高いことを示しています。一方、「ハバネロ」のカプサイシン合成能力は「鷹の爪」の0.6~0.7倍で、激辛品種であるのにも関わらず、カプサイシンを合成する能力は通常の辛味品種よりも低いことが分かりました。冒頭に「鷹の爪のカプサイシン合成能力、ハバネロ超える説」と書きましたが、結局のところ「鷹の爪」のカプサイシン合成能力が特段高い訳ではなく、「ハバネロ」の合成能力が、それほど高くないというのがこの説の「オチ」です。

ハバネロが激辛なのは、カプサイシンを合成する組織が非常に多いため

 「ハバネロ」はカプサイシン合成能力がそれほど高くない代わりに、カプサイシンを合成する組織が非常に多いと言われており、杉山ら(2006)の研究結果によると、「ハバネロ」におけるカプサイシン生合成組織の面積は「鷹の爪」と比較して、約47~63倍大きいことが明らかにされています。つまり「ハバネロ」は、単位組織あたりのカプサイシン合成能力は低いものの、カプサイシンを作る場所が多いため、結果的にカプサイシンを合成する量が非常に多くなり、激辛であると考えられます。また、他の研究では「ハバネロ」のような激辛品種は、胎座・隔壁だけではなく、果皮(果肉)でもカプサイシンを合成することが明らかにされており、これも「ハバネロ」が激辛である理由の一つでしょう。

【参照】・カプサイシン含有率と隔壁表面積計測によるトウガラシ果実におけるカプサイシン生合成能の評価,2006, 杉山ら

・・Difference in capsaicinoid biosynthesis gene expresssion in the pericarp reveals elevation of capsaicinoid contents in chili peppers (Capsicum chinense), Tanaka et al. 2017

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